フィリピン南部のミンダナオ島最大の都市、ダバオ市は台風の進路から外れた場所にあり、洪水被害が少ない地域でした。しかし近年は気候変動の影響を受け、大雨の影響で市内にあるダバオ川が氾濫したほか、２０１７年には強い台風によって約２万３,０００世帯が被害を受けています。さらに市内では、満潮時の雨水排水不良や内水氾濫、高潮による湛水被害も発生。現状を重く受けとめたフィリピン政府からの要請により、３ステージに分けて総合洪水対策計画策定業務を実施しました。

ステージ１では基礎調査、ステージ２ではマスタープラン調査、ステージ３ではフィージビリティ調査を実施。マスタープラン調査ステージにおいては、将来的な実施機関あるいは対象自治体であるカウンターパートと密に協議・検討を行い、地域にとって最適な構造物の組み合わせを選択。将来的なリスクを最小限に抑えられる反面、用地取得や移転などが発生する、実行難易度が高い最終案となりました。しかし、カウンターパートと協働し、現地住民や地域有力者への丁寧な説明を行い一定の理解を得ることができました。また、現地職員とともに対象地域が抱える課題について議論・検討を行うことで、治水対策に関する実践的な計画策定能力の向上にも寄与しています。